殺菌革命は起こるか −下−
「食の安心」に立ちはだかる塩素臭
〜ハセッパー水採用 濃度計精度も課題〜
殺菌剤として広く利用される次亜塩素酸ナトリウム(次亜ソ)。
使用基準を守れば、食の安全と言う意味で問題はない。
しかし「食の安心」となると、ある壁が立ちはだかる。
残存する塩素臭だ。
高い衛生水準を保ちながら、この課題をどう解決するか。
製造現場からは、塩素濃度計に対する信頼性の問題も浮かび上がってきた。
新しい技術を使い、先進的な取組みを始めた現場を追った。
■衛生レベル向上の反面
「メグミルク」ブランドを展開する日本ミルクコミュニティ(株)。
同社野田工場は02年5月、宅配用チルド飲料の製造ラインを新設。
飲料容器を一新し、環境配慮型の軽量びんを採用した。
衛生管理を向上するため、びんのふたを紙製からポリエチレン製に転換。
密閉性が高まり、賞味期限を5日間拡大できるようになった。
しかし、ある課題が立ちはだかる。
びんの殺菌に次亜ソを使っていたが、ふたの内部のわずかな空間に塩素臭が残るのだ。
衛生レベルを保ち、においを抑える工夫が必要となった。
当時、この要件に応える殺菌方法がいくつか存在していた。
野田工場では同社の他工場からも情報を収集し、長期間にわたる運用実績やコスト、操作性を考慮し、ハセッパー水を生成する装置の採用を決めた。
ハセッパー水は特殊な技術を使い、次亜ソに水と低濃度の希塩酸を混合したもの。
次亜ソのpHを調整することで、殺菌に有効な成分を大量に生成できる。
低濃度の次亜ソでも高い殺菌効果を確保できるため、塩素臭を抑えるのに効果がある。
■鍵握る塩素濃度計の精度
同工場ではハセッパー水生成装置を導入後、次亜ソ濃度を従来の20%程度まで抑えられるようになった。
前年度実績でも、製造後の品質検査で微生物は1件も確認されていない。
高い殺菌効果は維持されている。
「実は、もっと低い濃度にしようと思っています」(製造責任者)という。
より低い濃度でも、殺菌効果の高い範囲でpHが安定するかは未知数だ。
さらに悩ましいのは、殺菌に有効な塩素の濃度を正確に測定できるかという点。
一般的に、塩素濃度計の精度に対する信頼は高くない。
そのため、現場担当者が一定時間ごとに手作業で濃度を測定しているのが実態だ。
滴定と呼ばれるこの作業は、現場にとってはかなりの負担。
万一、濃度計の数値が誤っていれば、時間を遡って殺菌水を廃棄せざるを得ない。
これを受け、ハセッパー水生成装置を開発した(株)テクノマックスは高精度の濃度計を開発し、新型機に搭載した。
野田工場では今年3月に新型機へ移行。
稼動後約週間を経過し、「pHも安定的で、測定濃度の精度も高い」(同)という。
精度の高さが実証されれば、滴定の頻度も減らせる。
今後、半年程度かけて検証していく予定だ。
品質向上と負担軽減の両立も夢ではない。
「殺菌革命」は起こるか。
半年後の同工場に注目が集まる。(一瀬隆)
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